21世紀に歴史は新しい展開を始めています。エネルギー・環境・セキュリティ問題、グローバリゼーションの深化、技術・組織・知識分野でのイノベーション、BRICsの台頭といった嵐が世界を蔽い、人類史上ほとんど経験したことのない広がりと規模でわれわれの社会に影響を与えつつあります。

こうした中で、欧米、一部アジア諸国では、繁栄は軍事力や神授の権利にあるのではなく、イノベーション力とそれを可能にする人づくり(徳育教育)・組織づくりにあるという基本認識にたち戻って対応策を講じようとする動きが見られます。現在のわが国経済はバブル、デフレ危機から脱出したように見えます。しかし、これは現在世界を蔽っている嵐を乗り越え21世紀のわが国に本格的な繁栄を約束するものではありません。逆に現在のわが国のイノベーション力と人づくり・組織づくり体制は上述の各国に比べて弱まってきています。

歴史的にみると、わが国は人づくりを重んじてきました。この伝統を受け継いだ人材が明治以降、社会の大きな変化に直面した際、常にアジア、さらに世界をリードする推進力となってきました。それだけに、現在のわが国の人づくり・組織づくりとイノベーション力の弱体化は国家にとって忌々しきことです。これに対しどのような形で国家体制の再構築を行なうのかが、21世紀におけるわが国の繁栄を左右するといっても過言ではありません。

日本産学フォーラムは、1992年に経済界、学界をはじめとする有識者によって設立され、これまで産学連携等を推進してきました。ただ、現在のわが国が直面している事態の重大性を考えますと、その規模と結束を強化し、経済界、学界が協働して事にあたる必要があります。そのため、改めて明治に戻っての人づくり・組織づくりなど、基本に立ち戻って考え、議論するフォーラムとすること、また、既に先行した動きを見せている諸外国の米、英、EU、カナダ等の産学フォーラム、あるいは関係諸機関とのネットワーク作りを一層進めることで、21世紀の国民生活・経済にかかわる基本的諸問題の解決に寄与することを目的とします。