デイビッド・ワード氏(米国教育会議会長)の座長の下、この分科会では、教育を伝承、継続していくシステム(継続学習)についての問題を議論した。つまり、知識をいかにして学生に提供していくか、そしてそれが学生の専門能力向上にいかに寄与し、さらには産業や企業で役立てていくためにはどう継続学習を実践していけばいいのか、そうした社会的な目的についての議論が行われた。話題提供者である3人のケーススタディの中で、何より継続学習にはシステマチックな仕組みが必要だということ、そしてその中でクリアすべき幾つかの問題点について、指摘があった
まず最初に、全米コミュニティカレッジ協会のジーザス・キャレロン会長が、"ユニーク"かつ"ニッチ"であると言われている高等教育「コミュニティカレッジ」の役割について述べた。元来このコミュニティカレッジは、2年間でアカデミックな教育を施すわけであるが、その後により広範な目的に向かって、専門職のトレーニングを提供している。成人の学習者のために、企業のニーズに応えたプログラムを用意し、実際の職場で役立つ訓練を行っている。このように特別な種類の専門職のトレーニングを提供しているということは、ある意味でアメリカの高等教育の"収容力"というものが、このコミュニティカレッジに相当部分、依存していると言えるかも知れない。また、コミュニティカレッジはローカルに根ざしている。ローカルの資金を得て、ローカルな学生のニーズに応えており、このローカルという分野においてコミュニティカレッジは、非常に重要な役割を果たしている。さらに、より広範な高等教育の位置づけの中においても重要な役割を果たしている。そのため、こうしたコミュニティカレッジの機能が存在しなければ、世界の多くのところで継続学習が行われなくなってしまうのではないかという意見もあった。
二人目の話題提供者は、産業技術総合研究所理事長、日本学術会議会長である吉川弘之氏であった。吉川氏は、「夢を実現する前に、まず悪夢がある」ということ、そして悪夢をどう解消していけばいいのかについて述べた。
クリエイティビティが爆発して結果が生まれるまでには、実に長い苦労の期間(悪夢)があるという。 言い換えれば悪夢とは、発見から社会的目途への応用、アプリケーションまでのサイクルタイムであり、問題は、この悪夢の期間が長すぎるということ。これには、高等教育、企業の相互に責任があると指摘した。大学側が「夢」を見て、企業側はそれを商品化・商業化することが実際には重要なのだが、この間に長い"空白期間"が存在しており、これが「悪夢」の正体であるとした。
そのため、悪夢を解消するためには、まず大学では「基礎研究」だけでなく、「応用研究」の価値を認め、これを実践していくこと。また、企業のほうでも、こうした大学側の応用研究に対して、その成果が出る前に資金なりを援助していくことが必要である。何より、技術移転、知識移転を大学=産業間で円滑に行い、科学的な発見を企業の生産活動に結び付けるためには、このような両者の歩み寄りあってこそ初めて可能となる。 その結果、悪夢の期間を埋めることができ、また、そうしなければ、夢が現実にならないと指摘した。
三人目の話題提供者である大学評価・学位授与機構の機構長の木村孟氏は、日本の大学はパラドックス(逆説)に突き当たっている、と述べた。具体的には、海外から日本に来ている学生の数と、日本から海外に行っている学生の数の「ギャップ」の存在で、これを何とかしなければならないという。そのためには、大学側の「教える」ということに対する態度、そして学生の「学習する」ことに対する態度を早急に変えなければならない、という点を指摘した。そこで国立大学、公立大学、私立大学における実態をデータを引用しながら紹介し、教えることを研究するセンター(対話の場所)の必要性をいた。一方、イギリスのケンブリッジ大学では、いかにそうしたプロフェッショナル・トレーニングが提供されているのか、その様々なコースのリストを紹介し、大学の経営、教員の教え方などに関して、非常に豊富なレベルで開発されている具体例を示した。
池田幸雄氏(荏原製作所副社長)は自らのキャリアの経験をもとに育成すべき能力やスキル、そして大学における継続教育に対するニーズについて述べた。チャールス・チャンバーズ氏(ローレンス技術大学学長)は、教育における社会契約の概念と継続的改善のための評価プロセスの重要性を指摘した。細萱伸子氏(上智大学助教授)は、組織戦略として、また環境とのインターフェイスとして学習が行われるという文脈で興味を示した。吉川、キャレロン、木村の三者は、大学の社会に対する説明責任(アカウンタビリティ)の重要性の高まりについて議論した。鳥居宏次氏(奈良先端科学技術大学院大学学長)の質問で火がつき、一般教育とファカルティディベロップメントに関する問題について議論が進んだ。 |