大南正瑛氏(立命館理事)の座長の下、大きく二つの点が議論された。まず一つ目は、企業も大学も「エクセレンス(優秀さ)」を生み出すイノベーションに関して高い志、ミッションを持たなければならない、ということであった。そのためには、組織におけるマネジメントとガバナンスに対する責任が不可欠であること。例えば、大学についていえば、リーダーシップというものは分散するのではなく、タイトできめ細やかであるべきである。この点の重要性については、話題提供者であるノースカロライナ大学学長・モリー・ブロード氏から、「クラスター・オブ・イノベーション(革新の集団)」の説明の中で詳しく指摘があった。
他方、教育研究の現場について言えば、学問とキャリアの関係が重要である。すなわち、職に就くということと学問とは、不可分な関係があるからである。長期間に渡る両者の関係の中で、それにどう対応していくかということが、教育研究の場においてはとりわけ重要である。その中で、政府が行うことと大学が行うことの仕分け、あるいは両者の刷り合わせの必要性が議論された。さらに、政府、企業そして大学の三者の協力の下で、社会に開かれた共通の「社会資本」作りができないのか、グローバルな視点から各国を支援するようなことができないのか、といった観点での議論も行われた。
ニつ目は、個人に内部化された知的資源である「暗黙知」を共有化し、知識をネットワーク化していくことが重要になるということであった。それが企業や大学の優位性を高めることにつながること。また、この点を重視した戦略というものが不可欠であるとの認識から、様々な報告がなされた。
冒頭ブロード氏から指摘のあった「クラスター・オブ・イノベーション」は、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授も関わって進められてきたものであるが、このクラスター(集団)を作る上で欠かせないポイントは、幾つかの優れた大学が結集しなければ出来ない、ということであった。そこではリーダーシップが分散していては駄目で、インフラが整備されていなくてはならない、といったこれから克服すべき課題が明確に提示された。
ドイツ・バデルボーン大学のウォルフガング・ウェーバー学長からは、知識の爆発的な増大がある一方で、その価値は急速に低下するという「宿命」を、否応なく今日の知識は持っているのだという指摘があった。それに対処するためには、政府、企業、大学での戦略の変革、相互の刷り合わせが大切だということ。加えて、昨今の「知」の競争時代においては、スピードが要求されてきており、そうした中で、若者をいかに登用していくかが大きなポイントとなってくるとし、「リサーチユニバーシティ」の事例が紹介された。
文部科学省高等教育局審議官である木谷雅人氏からは、日本の現状と将来に関する提言があった。もとより日本の大学改革の基本的な視点は、個性化と高度化、活性化にあるということ。その改革の方向としては、社会の多様なニーズに応える人材養成機能を今後どう強化するのか、生涯学習機関としての大学の位置づけをどうするのか、さらに大学の教育研究の国際通用性をどう確保するのか、といった点にあると述べた。そして最後に、国立大学法人化の問題、その非公務員化の問題、統合化の問題があげられた。将来的には、現在の99校が87校へと減少する可能性を指摘した。
コメンテータであるブラジルのヘイター・ガガリノ・デ・ソウザ国際大学学長協会副会長は"途上国"の立場から、経営に関する問題について貴重な指摘を行った。また、韓国のエウイコン・キム仁何大学教授からは、現在韓国では、急激な速度で高等教育における統治が進んでいるとし、大学は自らの専門性を高めるとともに、そのネットワークを強化しており、韓国の経済発展に大きく寄与しているとの説明があった。 |